【IAB】「OTTストリーミングビデオプレイブック」日本語版を発行しました!

はじめに

はじめまして。元テクノロジー・ディビジョンで、現在はマネジメントオフィスに所属するCCI社員です。今回は、CCIが日本語版を発行したIABの 「OTT Streaming Video Playbook for Advanced Marketers(マーケターのためのOTTストリーミングビデオプレイブック)」 について紹介させていただきます。全文は30ページ以上もありますので通読するのは大変ですが、このコラムでだいたいの内容は理解できるかと思います!
でも、興味のある方は、ぜひ全訳日本語版にも目を通してみてくださいね。

目次

  1. IAB OTTストリーミングビデオプレイブックとは
  2. OTTの定義と歴史
  3. OTTの配信方法と視聴方法
  4. DTCブランドとの親和性
  5. OTTのターゲティングや計測
  6. 今後の展望とベストプラクティス
  7. 全訳版日本語版ダウンロード

1. IAB OTTストリーミングビデオプレイブックとは

今年のIABの年次総会(Annual Leadership Meeting)でも今後のデジタルマーケティングのカギとなる重要なキーワードのひとつとして扱われていたOTTですが、IABが昨年12月に発行した「OTT Streaming Video Playbook for Advanced Marketers(マーケターのためのOTTストリーミングビデオプレイブック)」は、特にマーケターを対象として、これからOTTストリーミングビデオをどのように活用すべきかという指針を統計データやインタビューといった内容とともに紹介しているもので、IAB内の組織である Data Center of Excellenceと、スポンサー企業の協力のもと編纂されました。
 とかく解釈がばらつきがちなOTTやその他用語の(IABとしての)解説やベストプラクティスなど、今後OTTビデオへの出稿を検討しているマーケターにとっては勿論のこと、改めてOTT領域の理解を深めたい方や米国のOTT視聴事情を知りたい方にとって役立ちそうな内容になっています。

今回、CCIでは本プレイブックの日本語全訳版を作成しました。以降の章でプレイブックの内容をハイライトで紹介していきます。

2. OTTの定義と歴史

OTTとは

OTTとはOver-the-Topの略で、ケーブルテレビや衛星放送の契約なしで、セットトップボックスを「飛び越えて(over)」インターネット接続のストリーミング配信で視聴者にテレビ番組を提供する、という考え方に由来する用語です。初期のOTTストリーミングビデオの例としては、HuluやNetflixなどが挙げられます。
 「OTTストリーミングビデオ」の正確な定義については、今日まだ業界でも結論が出ておらず、どのデバイスで見たか(例:大画面なのか、モバイルデバイスなのか)や視聴するコンテンツの質(例:プロが制作した高品質コンテンツか、YouTubeで見られるようなUGCか)でOTTかそうでないかが決まると唱える人もいるため、定義を共通化するのは難しいと言われています。しかも、今後動画視聴のインターネット移行がさらに進みストリーミングされることが当たり前になったとき、デバイスや画面、プラットフォームによる違いは更に曖昧になり「OTT」という用語が最終的には無用となるだろうと本プレイブックでは論じられています。
 そして「放送」か「ストリーミング」かという技術的な差異よりも、用途と視聴デバイスのバリエーション(モバイル=個人視聴用、Connected TV=複数人視聴も可能など)だけが差異として残ることになる、と述べられています。 本プレイブックで扱うOTTストリーミングビデオの定義として、IABでは「大画面で視聴するもの」を前提としています。

OTTの視聴方法にはいくつかの選択肢があり、一つは広告付きストリーミングサービス(AVOD)、もう一つはサブスクリプションサービス(SVOD)です。これらは従来型のテレビサービスにプラスされるものとして受け入れられているだけでなく、特定の動画コンテンツを視聴しようとした場合に、OTTストリーミングビデオでのみ視聴可能となるケースも増えてきています。

OTTの歴史

長いテレビの歴史の中で、OTTストリーミングビデオの登場と普及は「テレビの第三次革命」と位置づけられています。すなわち、テレビ放送が開始された第一次革命(1930年代~)、ケーブルテレビと衛星放送が登場した第二次革命(1970~1990年代)に続く大きな革新とみなされているということです。

インターネットの成長によって全く新たなビデオ配信の方法が可能となり、新たなビジネスモデルやコンテンツクリエイターのための資金獲得方法が生まれ、消費者にとってもブランドにとってもテレビの新たな黄金時代の幕が明けました。
 また、モバイルデバイスの普及がインターネット動画配信において安定したセカンドスクリーンとしてのエコシステムをもたらした一方、米国家庭でのConnected TV(CTV、インターネット接続型テレビ)の普及は、ビデオがリビングの大画面に戻ってきたことを意味します。そして今度は、ターゲティング広告を動的に配信し、その効果も測定することができるようになりました。Crackle Plusの国内広告営業戦略EVP、ダレン・オリーヴ氏の言葉を借りれば、「付加価値のあるテレビ」が登場したというわけです。

3. OTTの配信方法と視聴方法

視聴方法

次に米国でのOTTの配信方法および視聴方法について見てみると、2019年現在、9,700万世帯がインターネット接続テレビを保有していて、この数はアメリカの全家庭の75%にのぼり、ケーブルテレビがある世帯数(8,900万世帯)を超えています。

OTTストリーミングはインターネットプロトコル(IP)機能を有する様々なデバイスを通して配信されますが、これらのデバイスにはHDMIスティック(Roku、Amazon Fire TV、Apple TV、Chromecast)、ゲーム機、ブルーレイプレーヤー、Connected TVセットなどが含まれ、幅広い視聴の選択肢があります。

インターネット接続可能なデバイスの普及も手伝って、OTTストリーミングビデオは家庭でも外出先でもほぼ全てのスクリーンで視聴可能となっています。OpenXによると、平均的な消費者はOTTコンテンツの視聴が可能なインターネット接続型デバイスを3台所有しています。また、eMarketerによるとスマートTV(米国の54.6%の世帯が保有)に加え、Roku、インターネット接続型ゲーム機、Amazon Fire TVなどがテレビをインターネットに接続するのに最もよく使われるデバイスであり、中でも長時間視聴にもっとも使われているデバイスは、Roku、Amazon Fire TV、Apple TVだということです。

視聴者層

Rokuの調査によると、米国の人口の31%(約3,000万世帯)がケーブルテレビなどの有線放送の利用をやめるか、または全く利用していないことが確認されているそうです。今後5年間でこの数字は倍増し、2024年までには約6,000万の世帯が有線放送を利用しなくなるだろうとRokuは予測し、さらに有線放送の利用をやめた人の82%は、ケーブルテレビのサブスクリプションを解約してストリーミングサービスやOTTプロバイダーに乗り換えたことに満足していることもわかっているとのことです。

また、eMarketerによる調査では、有線放送の利用をやめた、もしくは全く利用していない世帯数が従来型有料テレビ(ケーブルTV等)を利用している世帯数をもう少しで上回ることがわかり、この傾向がさらに顕著になっているようです。
 有線放送の利用をやめた、もしくは全く利用していない層は、従来のテレビ広告ではリーチすることのできない重要なセグメント層となっているため、キャンペーンのリーチを拡大したい広告主にとっては魅力的な機会になっている、とプレイブックでは述べられています。

さらに、ミレニアル世代は、テレビの生放送の視聴の倍以上の時間、OTTストリーミングコンテンツを視聴しているという報告や、広告主が最も求めている18歳から49歳の視聴者層がOTTストリーミング視聴者数として最も伸長していることも特筆に値するでしょう。

4. DTCブランドとの親和性

DTC(Direct-to-Consumer)ブランドがどのようにOTTを活用しているかについても述べられています。新興のDTCブランドがまず出稿先として利用するのはSNSプラットフォームであるものの、競争の激化や度重なるアルゴリズムの変更、オーガニックリーチの減少などにより頭打ちとなり、その結果代替メディアとしてのOTTに活路を見出しているようです。

こうしたDTCクライアントの要望に沿うべく、NBCユニバーサルでは『Direct to Scale』という全く新しいDTC専門チームを立ち上げ、各ブランドと密に連携し、HuluのコンテンツやPeacock(同社のストリーミングサービス名称)を含む同社が所有または運営するメディア資産におけるプランニングを支援する仕組みづくりを行い、テレビ広告への参入を障壁と考えるDTCブランドでも出稿しやすい環境づくりをしているようです。

また、OTTストリーミングビデオは長尺のシリーズ物、スポーツ、映画、およびその他の種類の人気動画エンターテインメントなどが視聴可能で、従来のテレビの番組構成と類似もしくは、同一であったりすることがある一方、インターネットを通して配信を行う仕組みによりデータドリブン・ターゲティングや効果測定が可能なことから、DTCブランドに好まれているようです。

2019年に行われたTelariaとHuluの調査によると、DTC利用者がライブ配信またはオンデマンドのストリーミングテレビを視聴した時間は週13時間とのことです。これは、ケーブルテレビの視聴時間より20%長く、またSNSの利用時間より70%長くなっています。また、左記のようにDTC利用者とConnected TV視聴者にはかなりの類似性(共通点)があることが分かっているなど、OTTとDTCの親和性の高さがうかがえます。

5. OTTのターゲティングや計測

次にターゲティングや効果測定について見てみます。

ターゲティング

OTTストリーミングビデオではオーディエンスに基づいたターゲティングや動的な広告挿入により、特定の世帯や個人にリーチすることが可能となっています。使用可能なターゲティングオプションとしては、属性情報(年齢、性別、子供の有無、言語)、位置情報、コンテンツカテゴリーなどが挙げられますが、ファーストパーティデータやExperianやAxiomなどを使ったサードパーティデータを活用し、特定ブランドの商品を保有しているなどの属性を持つ顧客へのターゲティングも行われています。

DMPとの連携も実施されており、Adobeは 同社のDMPユーザーが、自身のファーストパーティーデータを活用するOTTプログラマティック広告配信において、Rokuを契約する3200万以上の世帯へのターゲティングが可能になったと発表しました。また、Comcast傘下のFreeWheelは、NielsenのDMPを用いてメディア消費および購買データに関する情報を提供し、自社のConnected TV/ OTTサービスにおいて広告主がリアルタイムでキャンペーンのターゲティングや最適化を行えるようにすると発表しました。

効果測定

マーケターは長年「自社の広告は本当に効果を出しているのか」という疑念に悩まされ続けてきましたが、OTTストリーミングビデオは広告主に詳細な効果測定とアトリビューションを提供し、広告主は広告が誰にどれだけ視聴され、好ましい結果(購買、来店、ブランドリフトなどのKPI)が得られたのかを理解できるようになってきました。

従来のリニア型テレビ放送では、一般的に視聴率、フリークエンシー、及びGRP(Gross Rating Point)などの指標が活用されてきましたが、OTTストリーミングビデオでは(どの世帯が当該広告を視聴したかが確認可能な)インプレッションが指標となります。再生率や視聴完了率を用いれば、どこまで広告が視聴されたかや最後まで視聴された広告の割合が測定可能です。

また、多くの場合Connected TVの広告はフルスクリーンで配信されるため常にインフォーカスであり一般的にスキップ不可能なため、基本的にはビューアブルな状態になっていると言われていますが、ベリフィケーション提供企業の中には、Media Rating Council(MRC)の動画広告におけるビューアビリティの定義に基づいて、Connected TV環境でのビューアビリティ測定を提供し始めたところもあるようです。

アトリビューション

広告主は基本的な広告配信指標に加えて、OTTストリーミングビデオのアトリビューション計測も行い始めています。現在はパブリッシャーや様々な効果測定企業と提携し、ブランドリフト、セールスリフト、実店舗への訪問データなどを得ることができているとのことです。さらに先進的なアプローチとして、「マルチタッチアトリビューション」と呼ばれるものがあり、これは複数のデバイスをまたいでセールスファネルに入ってくる消費者のカスタマージャーニーを確認し、どのプラットフォームのどの広告が最も購入やアクションを導くかを推定できる手法となります。

6. 今後の展望とベストプラクティス

OTTストリーミングはますます消費者のエンターテインメント体験のメインストリームのひとつとなっていくでしょうが、IABは今後の展望について大きく4点を挙げています。

  1. AVODの成長
    2019年OTTストリーミングビデオの広告費は、37%増加し70億ドルに迫ると見られています。高品質のオリジナルコンテンツを制作するには高額な予算が必要であることから、一部のSVODサービスは、広告付きサービスとスポンサーシップを組み合わせたハイブリッド型のビジネスモデルを模索することになるかもしれません。

  2. DTCブランドのOTTストリーミングビデオへの参入
    DTC広告主はOTTストリーミングビデオのリーチに加え、eコマースに親和性のある消費者とのタッチポイントの拡張性を活かそうとするでしょう。高度な個別ターゲティングやアトリビューションと、大画面でストーリーテリングができる力(映像、音声や動き)を組み合わせることで、広告主はパフォーマンスとブランディング両方の目標を達成することができます。

  3. コンテンツライセンシングとデータに関する規制
    Disney+、Peacock、HBO Maxなど、大規模なコンテンツ制作会社が運営するOTTストリーミングサービスが新たに立ち上がる中、著作権者は自身のコンテンツをよりコントロールし、著作権者が番組を囲い込むような動きがさらに出てくる可能性もあります。さらに、ターゲティングや効果測定においても強力なデータを持つデバイスプラットフォームが「ウォールド・ガーデン(walled garden)」となり、広告主がOTTストリーミングビデオのエコシステムで自由にキャンペーンを実施したり、その結果を測定したりすることが難しくなる可能性もあります。

  4. サービスの統合
    消費者がOTTストリーミングサービスをいくつ契約し利用する意思があるのかは、まだ結論が出ていませんが、サービスの統合・淘汰が起こることも予想されます。Amdocsの2019年のアンケート調査では、米国人回答者の70%は、自分のお気に入りのコンテンツを1つの専用サービスにバンドルしてくれるような単一のプロバイダーになら利用料を払う意思があると回答しているそうです。

最後に、同プレイブックではまとめとしてKPIの特定やサードパーティデータの活用など、広告主がOTTに出稿する際のベストプラクティスが提示されています。先行する米国OTT市場を理解しておくことは、国内での戦略検討の一助になるかと思います。
 ぜひ、全訳版を以下からダウンロードしてご一読ください。

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オリジナル版はIABのサイトにてお読みいただけます。