IABによるコロナ影響関連レポート

こんにちは。元テクノロジーディビジョンで現マネジメントオフィスの社員です。今回はこの場をお借りして、
IABが最近発表しているレポートから新型コロナウィルス影響関連のトピックをいくつか紹介します。
普段の記事とは多少毛色が異なってしまいますが、気軽に読んでみてください!

目次

  1. 新型コロナウイルスの広告価格への影響
  2. ポストコロナ時代のコンシューマーとブランドの関わりかた
  3. 参考

1. 新型コロナウイルスの広告価格への影響

IABでは新型コロナウィルスパンデミックの広告収益への影響について数回に渡り調査を行っていますが、5月28日にセルサイドの2回目の調査内容を公開しました。

■ 調査期間:2020年 4月29日~5月11日
■ 調査対象:米国の173社(うち65%がパブリッシャー、35%がSSP、
アドエクスチェンジ、アドネットワークなどのプログラマティック事業者)

全体的な影響(米国)

本調査によると、2020年のデジタル広告全体としてのCPMは新型コロナウイルスによるパンデミックの影響を受け、平均で16%下落しました。チャネルごとに見ると、ディスプレイ広告とモバイルアプリ広告が最も影響を受けており(30%以上)、それにソーシャルメディア広告が続いています。逆に、もっとも影響を受けにくかったチャネルはポッドキャスト広告や動画全般、およびサーチでした。

セラー全体の約3分の2が、新型コロナウィルスによるロックダウンの開始以降に広告価格の下落を経験したと回答しました。そしてプログラマティック事業者よりも、予約型広告も扱うパブリッシャーのほうが大幅な広告価格の下落による影響を受けていたことが分かりました。8%のプログラマティック事業者では逆に大幅なCPM上昇を経験していたことも分かりました。

また、OTTやCTVなどのコネクテッドデバイス広告(ストリーミングスティック、ゲームコンソール、スマートTVなどを含む)が、もっとも価格変動の影響を受けていないことが分かりました。逆に価格変動の影響を一番受けたのはデスクトップ(PC)であることが分かりました。

コロナ禍の媒体は値下げによって優位性を確保

さらに、CPMを値下げしたパブリッシャーにその理由をたずねたところ、以下のような回答が挙げられました。コロナ禍においてパブリッシャーが広告商品の値下げによってビジネスを維持しようとしていたことが分かります。

多くのブランドで広告費削減見込み、しかしデジタル広告支出は増加

一方、バイサイドを見てみると、IABが57社の大手ブランド(D2Cを含めない)に対して行った調査では、約半数が2020年は前年より広告費を削減すると見込んでいることが分かりました。 しかしながら、ほとんどのブランドは前年と比較して2020年後半(7月~12月)にはデジタルチャネルへの広告費を増やすつもりであると回答しています。

では、ポストコロナの時代にブランドは消費者とどのようにかかわっていくのでしょうか。米国の広告主達が既に始めている取り組みを次の章にて紹介していきます。

2.ポストコロナ時代のコンシューマーとブランドの関わりかた

IABでは5月26日に「次の経済のための再参入戦略( Re-entry Strategies for the Next Economy)」というテーマで広告主向けタウンホールミーティングを開催し、ポストコロナ市場への参入戦略のヒントとして、新型コロナウイルスの発生によりブランドと消費者の関わり方がどのように変化しているのかについて事例を含む調査結果を発表しました。

おもな内容は次のとおりです。

つづく巣ごもり傾向、これから伸びるカテゴリーは?

全体的には、米国の2020年第二四半期のGDPは12%減少すると見込まれており、2021年に入っても失業率が二桁を下回ることはなく、2008~2009年の不況でも達しなかった未曽有の経済危機に陥ると予想されています。

IABが調査した米国人回答者のうち約3割は、彼らの経済状況が新型コロナウィルスによって少なくとも2020年末までは影響を受けるだろうと考えていることが分かりました。また、同じく3割程度の米国消費者はがコロナ危機の終了後も大きな屋外活動を減らそうと考えており、深刻な不況とその先を見据えた上での巣ごもり傾向が強まっていることも分かりました。

今後半年間の消費者の支出は、全体的には減少傾向ですが、外出・ファッション・ラグジュアリー品などへの出費が減り、家庭で使う製品を中心に増加していくと予想されています。

新たなブランドを試し、使い続ける消費者

米国のEコマースへの支出は3月初頭から4月中旬にかけて前年同期比+30%の伸びを見せており、それは主に食料備蓄や健康関連製品などによって後押しされました。そして170万世帯が今後も食料品のオンライン購入を続ける見込みであることも分かりました。
 

また、興味深いことに、このようなオンライン消費の増加によって消費者は新しいブランドを試し始めていることが分かったそうです。IABによると10人中7人の消費者が食料品やパッケージ商品、配送サービス、メディア消費などを含むあらゆるブランド群において、コロナ禍以降に今まで使ったことのなかったブランドを試していることが分かりました。

さらに、彼らの多くは、現在試している新たなブランドを使い続けていくと考えられるそうです。

コロナ禍においても活況のD2Cビジネス

D2C(Direct-to-Consumer)ブランドの中には価格の下がったTVに出稿して大きく利益を上げたところもあります。Livelyという女性向けの下着・ホームウエアブランドは、コロナ禍によって春に予定していたマーケティング計画(休暇に焦点を当てた水着ラインの展開)を中止せざるを得なくなったものの、代わりに女性が自宅で1日中着たいもの- たとえば、ラウンジウェアや快適な下着などの宣伝をすぐさま開始し、目覚ましい結果が得られたということです。

さらには今まで障壁の高かったTV広告の単価が劇的に下がったために、TVCMに参入し、TVキャンペーンによるWebサイトでの新規インプレッションは2千万回を超え、メールとSMSチャネルからの週間売上も20%増加したとのことです。

また、食料品大手クラフト・ハインツのように、今までレストランや小売店向けに卸していた缶詰めビーンズや調味料などの商品を、流通経路をD2Cにして消費者に直接販売し始めるような動きも出てきました。

飲料メーカーペプシコも、PantryShop.comという自社ECサイトをオープンし、傘下のペプシコ製品やフリトレーブランドの製品などの販売を開始しました。このサイトはプロダクトキュレーション的な側面も持ち合わせており、ステイホーム向けの商品のレコメンドなども行われているそうです。

ショッピングスタイルの「ニューノーマル」

IABの調査レポートには「Old Store is No More」、「Cash is King Dead」などの言葉が並び、米国の旧態依然とした店舗が様変わりしつつあることが報告されています。

まず、実店舗で買い物する人の87%が非接触型の決済やセルフレジ決済の選択肢を好む傾向にあることが報告されました。
 大手スーパーマーケットチェーンのウォルマートでは、実店舗利用の際に以前のセルフレジではタッチスクリーンを操作しなければいけなかったところを、ウォルマートの決済アプリと連動したQRコードのスキャンによって非接触での決済を可能としたとのことです。

また、現金が「清潔でない」と考える人が増えたことにより、中国などに比べると浸透率が格段に低かったモバイルペイメントの使用も増えていくと予想されています。(モバイルペイメントの浸透率は中国では80%なのに対し、米国では10%程度と言われているようです。)

BOPIS(Buy Online, Pick-Up in Store)というキーワードも出てきており、商品をオンライン注文して店舗で受け取る方式が定着してきています。アドビの分析によると、4月1日から4月20日の間にBOPIS方式で買い物した人の割合が前年同期比で208%に急増しています。

ブルーミングデールズやノードストロムなどの大手デパートでは、店舗に面した歩道で商品をピックアップできるサービス(curbside pickup)も提供しており利用が増えているそうです。

バーチャルショッピングも人気

ARを活用したリテールとメディアのパートナシップも生まれています。服や家電の量販店コールズ(Kohl’s)は、SnapchatのARポータル機能を駆使した「バーチャルクローゼット」機能を活用することで、家にいながら(特に在宅勤務時に着用する)アスレジャーファッションなどを閲覧し、Snapchatアプリを離れずに買い物ができるようにしたとのことです。

多くのデジタルストアは単なるショップからマルチアクティビティセンターへと進化しており、AR、VRおよびその他の仮想ショッピングツール、コンシェルジュサービス、学習、エンターテイメント機能を取り入れて様々な試みを行っています。

アパレルメーカーのShapermintは、在宅ワーカー向けにヨガのライブプラクティスや瞑想、チャイルドケアのセッションなどをストリーミング配信しながら、自宅で着用できるシェイプウェアやラウンジウェアのセレクションも紹介したところ、ブラやレギンスの売り上げの増加につながったとのことです。

ナイキは中国国内店舗の70%が閉店していた最中にも、中国の消費者向けに家で出来るワークアウトなどのコンテンツを発信したことで、結果的に12月~2月のオンラインセールスが前年同期比で35%増加したとのことです。店舗再開後もナイキはデジタル施策にも注力し続け、売上が三桁成長に届く勢いで伸びているそうです。

ポストコロナ時代に必要なターゲティングとは

まとめとして、IABではポストコロナ時代のブランディングではターゲティングがより重要視されることが考えられると述べています。特に、米国のように地域によって経済再開状況やロックダウン状況などが違ってくるようなところでは、ジオ・ロケーション(地理的位置)やコンテンツの差別化が、ブランドがメディアプランニングする上で常に念頭に置かなければいけないパーツになるとのことです。

とりわけジオターゲティングに関しては、ジオフェンシングや、時間を組み合わせたジオ・タイムフェンシングのようなより精緻なターゲティング機能が要求され、さらにはそれらに応じたコンテンツの差別化や出し分けも重要になってくるとのことでした。

3. 参考

The IAB Re-entry Report: The Post-COVID Brand Meets the Post-COVID Consumer

FY 2019 Internet Ad Revenue Report & Coronavirus Impact on Ad Pricing Report Q1 2020

COVID Impact on Ad Spend 2020: The Transformation of the Television Marketplace