DigiTrust 終了の背景

DigiTrust 最終章へ

こんにちは。今回は IAB Tech Labによる6/17付 ブログ記事の紹介です。
IAB Tech Labは、2018年4月にTech Lab傘下に収めて以来、推進してきた共通IDの同期ソリューションであるDigiTrust IDを、2020年7月をもって終了させることを発表しました。ブログ記事「DigiTrust – The Final Chapter – 」に終了に至った経緯が書かれていますので紹介します。 

DigiTrustとは

DigiTrust(デジトラスト)は、2018年4月にTech Labが買収した、非営利で独立した共通IDコンソーシアムです。

ブラウザの処理(レイテンシー)や健全性に弊害をもたらしている広告プラットフォーム間の無駄なサードパーティcookieの同期を劇的に減少させ、近年ブラウザ各社が制限を強めるサードパーティcookieへのネガティブな風潮を低減させようとする共通ID(Shared ID)の取り組みでした。

「従来のサードパーティcookieに代わるもの」ではなく、「あくまでデジタル広告エコシステムの発展によって無尽蔵に増えてしまったcookieシンクのトラッキングピクセルや不透明なデータ収集プロセスなどによる負荷を軽減させることで、ブラウザやプラットフォームの負荷を減らして健全化を図るためのソリューションだった」とTech Labの担当者は述べています。

DigiTrust 終了の背景

DigiTrustは普及のために、ID送信元となるパブリッシャー(媒体サイト)には仕組みを無償で提供する一方、IDを活用する側であるSSP/DSPなどのプラットフォームには有償で仕組みを提供していました。

パブリッシャー側での導入は順調に進み普及していったものの、プラットフォーム側での普及は思うように進んでいなかったようです。

導入パブリッシャーが増えたことによる運用・インフラコストの増加に対し、プラットフォーム側からの資金調達が不足していったことに加え、Safari・Firefoxではすでにサードパーティcookieがブロックされるなど、DigiTrust機能の根幹ともなっているcookie機能周辺および識別子全般に関する業界的な方向性が安定せず、先行き不透明だった中、Google Chromeが2021年までにサードパーティcookieを廃止すると発表したことが決定打となり、存続のためにさまざまな可能性を模索していたものの、結果的に2020年7月31日までにDigiTrustサービスを終了させる決定がなされたとのことです。

Tech Lab ブログからの引用;

“Over the last 18 months, our industry has seen the threats to third-party cookies increase with each browser software release, capped off with the announcement by Google Chrome in January 2020 that was the final nail in the coffin for third-party cookies. While ID syncing among platforms continues, along with the economic and consumer benefits of shared ID services, industry platforms recognize that any service that relies on third-party cookies—including DigiTrust and other standardized cookie approaches—have a limited lifespan of utility.”

https://iabtechlab.com/blog/digitrust-the-final-chapter/

「この18ヶ月間、業界では、ブラウザソフトウェアのリリースのたびに、サードパーティCookieに対する脅威が増大しているのを目の当たりにしてきました。そしてその締め括りとして2020年1月に発表されたGoogle Chromeのアナウンスは、サードパーティCookieにとっての “棺桶への最後の釘” となりました。プラットフォーム間の ID 同期は、共有 ID サービスの経済的・消費者的なメリットを伴い継続されていくでしょうが、プラットフォーム各社は、もはや(DigiTrustや他のcookie標準化アプローチを含む)サードパーティCookie に依存するいかなるサービスにおいても実用性の寿命に限りがあることを認識しています。」

今後について

■ DigiTrustとProject Rearc

IAB/IAB Tech Labでは、プライバシーを考慮した新たな計測やトラッキング手法の標準ルール策定を掲げて「Project Rearc」を推進していますが、DigiTrustサービスはProject Rearcからは完全に独立しており、DigiTrustの終了はProject Rearcのプロセスに何ら影響を与えるものではないと述べています。そして、DigiTrustの終了ひいては全てのサードパーティCookieの終焉により、Project Rearcにおけるデジタル広告エコシステム再構築の取り組みはより一層重要なものになるだろうと締めくくっています。


もともとはIABのワーキンググループからスピンアウトし、一昨年にIAB Tech Labに買収され再びIAB傘下となったDigiTrustでしたが、当初は特定のプラットフォーム(ドメイン)由来のIDではないという中立性からも、多くのパブリッシャーやプラットフォームに支持され普及が進むのではないかと考えられていました。

しかしながら、度重なるブラウザ側でのcookie制限関連のアップデートや、FirefoxでのDigiTrust自体のブロック、さらにはGoogle Chromeによるサードパーティcookie2年以内廃止の発表が追い打ちとなり(DigiTrustの仕組み自体もサードパーティcookieに依存している部分があるため、サードパーティcookieが使えなくなる=仕組みを根幹から変えざるを得ないことを意味します)、運用コストなどの収支状況が悪化していったことも重なり、残念ながら当初の想定よりもかなり早い段階で終了する運びとなってしまったようです。


IAB Tech Labについて

IAB Tech Lab (The IAB Technology Laboratory) は、米国のインタラクティブ広告業界団体であるIABが設立した、デジタルメディアとデジタル広告業界におけるグローバルな技術標準の確立と導入を促進するための国際的な研究・開発のコンソーシアムです。CCIは2017年1月からTech Lab会員となっています。