Cookie終了で計測・アトリビューションはどう変わる?

IAB Tech Labによる 6月24日のブログ記事「With The End Of Browser Cookie Support, What Will Happen To Measurement And Attribution?」 (ブラウザcookieの終了で、計測とアトリビューション はどうなるのか?)という記事の紹介です。

先般のGoogle ChromeでのサードパーティCookieの2年以内廃止発表に伴い、今後2年に満たない期間でパブリッシャー、広告主、データベンダー、広告プラットフォームなどのあらゆるプレイヤーはデータ収集、オーディエンスターゲティング、計測やアトリビューション分析の手法の再考が求められることになります。そして、広告効果の計測やユーザー行動の分析手法が変更を余儀なくされることで、キャンペーンやウェブサイトの最適化の仕方も変わっていくことになります。

今までCookieやデバイスベースの識別子に頼っていたレポーティングやアトリビューション分析が今後どうなるのか、すべてのブラウザが新たなひとつのアプローチの採用に落ち着くのかどうかは未だ流動的でIABでもわからないというのが実情のようです。そのような中で、この記事では現段階でわかっている情報として、Googleの提案するプライバシーサンドボックスの内容がどのようなものなのかを主に計測・アトリビューションの側面から説明しています。(繰り返しになりますが、2020年6月24日時点の記事であることをご承知おきください。)

Google Chromeのプライバシーサンドボックスについて(現時点で)覚えておくべき3点

①ポストインプレッション、ポストクリックアトリビューションは最終的にサポートされるかもしれない

Chromeのプライバシーサンドボックスにおいて、数週間前まではコンバージョンをインプレッションに紐づけることが(インプレッションがクリックされた・されないにかかわらず)できなくなるのではないかと思われていましたが、Google Chromeチームによる最新の提案では、何らかの形でポストインプレッションのアトリビューションがサポートされる可能性が示唆されているそうです。しかしながらアクセスできるデータは限定的な集計データに限られ、ユーザーIDやデバイスIDなどの情報はいかなるプラットフォームにも渡されることはなくなります。ログレベルデータも、現在我々が見ているものとはかなり違ってくるとのことです。

なぜこれが重要か? :ポストクリックのみのアトリビューションはバイサイド、セルサイド両者に弊害があります。バイサイドでは、クリック指標がそれほど重要ではない場合でも広告主がクリックを基準に競合することになり、媒体CPMが高騰してしまうからです。そして、コンバージョンにポストインプレッション広告がアトリビューションされないことで、CPC(Cost per Conversion)も跳ね上がります。セルサイドから見ると、多くの広告主が、より広告効果が高そうに見える媒体に予算投下するようになるため、結果的に質のよい媒体であっても収益減が生じてくる可能性があります。

結論として、クリックが常に良いパフォーマンス指標であるとは限らないため、ポストインプレッションでのアトリビューション機能はバイサイド・セルサイド両方にとって非常に重要な指標であるということです。

Privacy Sandboxの当該機能について:Privacy Sandbox article, “Conversion Measurementwith Aggregation Explainer” (April 9, 2020).

②集計データのみ利用可能な世界に

Chrome チームはプライバシーやデータ関連の懸念を考慮し、ブラウザやデバイスまたぎでオーディエンスを紐づけたり、デバイスやブラウザの特徴に基づくフィンガープリンティングでユーザーを特定し、行動分析をしたり、セグメント化したりする機能を提供することには消極的です。そして “コンバージョンレポートを匿名化し、個々のユーザーやクリックにリンクできないようにしたい “と考えているようです。

なぜこれが重要か?: 上記はすなわちユーザーのイベントレベルでの可視性はなくなり、集計データのみが利用可能になるということです。つまりブラウザ側でどのような情報を使用し、いつ送信するかが制御されるようになるのです。ログやローファイルとして公開されるデータは大きく様変わりし、ユーザー割り当てID、デバイスID、画面解像度、IPデータ、OS、ブラウザバージョン、タイムスタンプなどの情報はおそらく利用できなくなるか、マスクされることになると記事では述べられています。

Privacy Sandboxの当該機能について:Privacy Sandbox article, “Aggregated Reporting API” (March 9, 2020).

③レポートスケジュールはブラウザによってコントロールされる

レポートスケジュールはブラウザによって制御されるようになります。ユーザーのブラウザが、スケジュールされた時間に、複数のサイトから来るすべてのデータを1つのレポートに集約することになります。現在行われているようなデータ配信のメカニズムでは、サーバーやレポーティング用プラットフォームにリアルタイムでデータが配信されることはなくなります。収集できるデータはユーザーのブラウザによって制限され、イベント発生後に集計して配信されるようになるということです。

なぜこれが重要か?:このレポーティングの時間枠や仕組みがバイサイド、セルサイド両方の財務調整/経理処理に与えるであろう影響を考えると、多くの人が不満を抱くと予想されます。インプレッションやクリックイベントのデータがリアルタイムで提供されなくなることから、データ調整には1日から30日かかる可能性もあるでしょう。また、ユーザーが同ブラウザを開くのがもっと後になった場合は、データ照合が行われない可能性すら出てくるのです。

上記に伴い、広告主(マーケター)側では以下のことができなくなると想定されています:

  1. キャンペーンの稼働状況をリアルタイムで確認することができなくなります。
    適切な広告が適切な場所に適切に配信され、適切なランディングページに誘導されているかどうかをリアルタイムで評価することもできなくなります。
  2. すべてのブラウザがインプレッションとクリックデータをそれぞれのサーバーに送信するまで、正確なレポート数値を見ることができなくなります。
    これを完全に把握するには数日から数週間かかる場合があります。その結果、配信パフォーマンスが不安定に見える可能性があり、バイヤーや入札プラットフォームが行っている不正在庫排除やキャンペーン最適化の妨げになる場合もあるでしょう。
  3. 配信データの調整も困難になります。
    配信データが変化し続けなかなか確定しなくなるため、複数のプレーヤーが配信数値について合意することが非常に難しくなるでしょう。ユーザーが予定された時間内にブラウザを起動せずインプレッションデータがサーバーに送信されなかった場合、それらのインプレッションは永久に報告されない可能性もあります。

Privacy Sandboxの当該機能について: “Scheduled Reports” section of this Privacy Sandbox article, “Click Through Conversion Measurement Event-Level API” (On GitHub, last accessed May 11, 2020).


IAB Tech Labでは現時点でのプライバシーサンドボックスでの制限や課題を上記のようにまとめ、「誰もが影響を受ける問題なので、全てのステークホルダーが協力し解決策を探していかなければならない」とまとめていますが、筆者はこれを読んだとき、「リアルタイムでのキャンペーンの進捗確認もできなくなるなんて、2年後のキャンペーン運用がどうなっているのか想像できない…!」と思ってしまいました。
果たして今後このような懸念を払拭するような提案がサンドボックスでなされていくのか、それとも業界が一丸となって全く新しいCookie非依存のアプローチを模索していくのか、非常に気になるところです。


IAB Tech Labについて

IAB Tech Lab (The IAB Technology Laboratory) は、米国のインタラクティブ広告業界団体であるIABが設立した、デジタルメディアとデジタル広告業界におけるグローバルな技術標準の確立と導入を促進するための国際的な研究・開発のコンソーシアムです。CCIは2017年1月からTech Lab会員となっています。